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深水ニシンの個人サイト「あらしののはら」管理用ブログです。
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蔵出しです。pixivに上げたこともあったけれど、
どう考えても変なところがあったので、辻褄を合わせてリベンジ! 


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 夜も冷えてきた。月明かりは朧げで風に運ばれた分厚いかたまりの中に見え隠れする。天上の光と闇の葛藤よりはやや下降して、“たから” を置いた崖の頂上では、みみみとわざぼーが相変わらず、のんびりとまどろんでいた。
 たき火にあたりながらみみみは胡坐でかけている。わざぼーをつかんでその首元、人間でいったらうなじの辺りに針金ハンガーの鍵づめをあてがっている。これを固定しようと、ビニルテープを一周、二周と巻きつけていく。
 「おい、みみみ」
 「んー? なんだよ、わざぼー」
 みみみは作業を止めない。
 上半身はサラシを巻いただけの姿で、ちょっとした乙女心なのか、その左胸のあたりに小さなリボンが縫いとめられていた。何となく貧乏くさい装飾だ。少女の飾りの質の良し悪しはともかく、若い娘が薄着で夜の屋外にいるのは危険だし、気温も冷たい。わざぼーはみみみのことが心配だった。いや、それ以上に自身のビニルテープで針金ハンガーをとりつけられようという状況のほうがより重篤な危機のように思われる。
 「一体、何をするつもりなんだ」
 察しが付かない様子のわざぼーにみみみはいたずらっぽい笑みを浮かべる。ハンガーを固定し終えると、自分の湿って皺だらけになった服を取り出して着せつけた。
 「よし!」
 みみみはわざぼーを自分のすぐ手前に立たせて満足げに歯を見せて笑った。完成したその姿は、丁度、みみみの服からわざぼーの頭が飛び出た格好だ。湿った衣服のしおれ加減とわざぼーの緑の顔色が相俟って、とても気の毒な様子。
 わざぼーは心底呆れた風である。
 「オレはカカシか」
 「おう! これで敵も来ねぇだろうし、アタシの服も乾かせる! 一石二鳥だろ?」
 「本気でそう思っているのか?」
 「ううん?」
 みみみはあっけらかんとした口ぶりで首を横に振る。
 「どーせ今日は、もう来ないだろうから、明日の昼までそのままでも大丈夫だろ―― ふああ……」
 言い終えないうちに口元に手も当てず大あくびをした。少しとぼけてみただけなのだ、とわざぼーは胸を撫で下ろした。しかし、そのわざぼーの姿―― 白い服から突き出た緑色の顔に白い大きな目玉が2つ。裂けるほど幅の広い唇は赤く分厚い。それが焚火の灯りに浮き上がっているのは十分化け物じみているのだが。
 今日は暗い、とわざぼーは思う。月明かりが弱い。星も薄い。次第に数を増す雲に空は覆われはじめていた。わざぼーはたき火が照らす向こう側の空間を眺めるが、明かりの輪郭より先は何も見えない。いつものことだが、空に浮かんだまま取り残されてしまったように錯覚する。今日はむしろ、どことも知れない闇の中に放り投げられたようだった。それぐらい、自分たちの周囲は真っ暗だった。誤って淵から転落する危険があるから、あまり動きたくない。
 (奴らも闇討ちの方が有利だろうが……)
 敵が夜に奇襲してくることはめったにない。あたりに明かりがあるうちにやってくる。彼らも足場が不利になるのを気にしているのかもしれない。が、なんらかの手段を講じたって良いはずだ。みみみが眠そうにしている今がチャンスではないか。
 (あるいは、敵にも戦いにかける情熱やプライドがあるということなのだろうか?)
 わざぼーはすこし前のことを思い出す。
 その頃の敵たちは皆叶えたい願いをもって戦いを挑んできた。彼らは“たから” を目的とするボスの命令に従っていたのだ。願いを叶えることと引き換えに命令の成否によって自身の存在価値を決めつけられてしまう“魔の約束” をボス<わざ武王> と交わしていたのである。
 わざ武王を倒し、新たな陣営での敵がやってくるようになった。果たして、彼らと以前の敵とが同じ気持ちで戦いに臨んでいるかはわからない。つい先日、空から大量の奇襲があったばかりじゃないか――
 「おい、夜はめったに来ないからといって油断するんじゃないぞ! この前シッポウの看病をしていたときにやってきたような奴らだっているんだからな」
 「わーってるよ!」
 みみみは少し煩わしげに相槌を打つ。
 「でも、ま、こんな時間じゃ敵だって眠いだろ。ふあぁー……」
 二度目のあくびは背伸びをした。ゆるやかな夜風の冷気が伸び上がった身体にしみとおって吸い込んだ空気をそのままクシャミで吐き出してしまう。
 「おいおい、また風邪ひくぞ」
 「あー…… さびーな、もうあんな酷い目にはあいたくないぜ」
 みみみはわざぼーの言葉を聞き流した素振りで独り言のように呟き、鼻をすすった。背中にかかるポニーテールに束ねた長い髪を、顔の前に回して半ばのあたりをさわる。生乾きなのを仕方が無く思いながら、軽く暖めるつもりでたき火であぶった。
 暮れ方の敵との戦いで水を浴びた。流石に上下とも下着でいるのはみっともないのでズボンは穿きながら乾かしていた。たき火以外に身体を温める工夫はしなかった。就寝時に使う毛布を出して肩にかけても良かったが、寝具に湿気が移るのは嫌だった。
 (たしかに、風邪をひくかもしれない)
 少しばつが悪い考えがよぎるが、布団にはいれば大丈夫だ、とみみみは気を取り直す。たき火から少し距離を置いた暗がりに布団が敷いてある。奇襲があったとき、姿を見つけられないための工夫だ。
 しばらく髪を暖めていたが、意を決してベルトのバックルをゆるめ、座ったまま脱いだ。なるべく皮膚が重なっている面積を増やして熱を逃がさないよう身体を丸めていたので、少し苦労した。両腕を持ち上げてズボンを広げ、たき火の前に置いた“たから” の箱を隠すようにかける。これはズボンを乾かすためだ。
 支度を終えると髪を纏うように身体に巻きつけ、急いで布団に向かった。温もっていない毛布の重みにしばし沈み込む。まだ寒い。燃えるたき火のほうへ目をやれば、自分の服を着込んだわざぼーが赤く照らされながら立っている。我ながら気色の悪いことをしてしまった、と少々後ろめたい気持ちにもなった。
 「はは、わざぼー。気味悪ぃなあー」
 「おまえの仕業だろーが」
 「いやぁー、そうなんだけどさ……」ふと、イメージが浮かぶ。―― 自分の服を纏ったわざぼーがたからを守る。「…… 夢に出てくるかも?」
 「自業自得だろ」
 ふふっと笑みを含み、みみみはいつもの調子の突っ込みに安堵する。わざぼーの不気味な姿を脳裏から打ち消して昏睡の体勢を整えた。わざぼーのほうを向いたまま毛布を口のあたりまで引き上げて目をつむる。
 「おやすみ、わざぼー」
 「ああ、おやすみ」
 わざぼーはくぐもったみみみの声も聞き逃さない。


* * *

こんなみみみはお嫁にいけません

というお話。
続きそうで続きはない。

交換小説が書きたかったんだ。
そして、相手を作るのが面倒だから一人二役感覚で書こうと思ったんだ。
一人で交換日記をやったことのある私ならできないこともない! って思ったんだ。
(できなかったから頓挫したんだ)

ところで、個性的で自己主張が強いキャラクターばかりが登場する作中、ヤミー軍団って貴重な存在だと思いませんか? 「ぐぅ!」おめんオーディエンスみたいのとか。群衆っていう一塊が珍しいから、逆に群れて一体化してる っていうこと自体に個性を見出しそうになるんだけれど。

ボロからシャチになる的な展開はあったりするのでしょうか。
(『北斗の拳』)

雑多な大勢をさす記号が「おめん」である可能性を示唆させる。きもちわるいおめんの群集の登場はインパクトあったなぁ、と話が逸れ逸れであります。

顔って何を象徴するのでしょう? 頭・顔が個人を象徴するものとして機能しているから、ラヴーマーは負けてしまうわけだけど―― みみみが、まー固有の「おめん」を被っただけで、ラヴーマーは恐れ多くて攻撃できなくなってしまった。「おめん」で個人を区別していると言える。

素朴な疑問としては、まーがみみみのコスチュームを着た場合はどうなったんだろう。単にまーさまご乱心の兆候と言ってなんか別の事案が浮かんでくると思うんだけどどうか。まーさま何したいの? って話になる。

はてさて、コスチュームは何を象徴するでしょうか?


そんなことを考えながら、続きが書けたらいいなとか思った。 (ブツブツ)
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