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深水ニシンの個人サイト「あらしののはら」管理用ブログです。
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※ 追記 追加(120723)


ふと、“ギンタローの頭の円盤はなんなのか”という話題で盛り上がったことがあった。


・・・今まで描いた中ですごく似てないと思う;


 千笑さまとお話をしていたときにこの円盤についての見解が割れた。千笑さま曰く「<剃り>ではないか」という。『わざぐぅ!』のネーミングルールはどうやら昔話・童話・伝説の題名(仮題)などから借用しているらしいので、ギンタローの元ネタは“金太郎”だろうと踏む。金太郎といえば童髪で頭のてっぺんに<剃り>がある。この<剃り>の部分を示しているのではないか、という。――つまり、“金太郎”の造型から拝借したパーツではないかということです。こういったパーツで解りやすいものには<○に丸の前掛け>。これは<金の字の“腹掛け”>を想起させるためのパーツだと思われます。

 さて、私の見解について会話の際には明言しなかったのだけれど (<コラ!)、これは<目玉>だと思った。二重丸は<目玉>。この発想、実は私がこの作品に関連して作った二次創作キャラクター“ パロ ”に使っている。(パロは『わざぼー』連載時に作り、ネット上に公開した)肩とベルトの丸は目玉のつもりで入れています。どうして目玉を造型に盛り込みたかったかといえば、この作品にはわざ武王という<目玉>が付きまとっているから。

 元ネタの造型から拝借したものとしてもう一つギンタローの“電撃攻撃”もそれではないかと思った。・・・“金太郎”が“電撃”といっても、私は当初ピンと来なかったのだけれど“金太郎”について調べていたら行きあたった。“金太郎”は“雷神”と関係があるらしい、という説がある。

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* * *

 ところで“金太郎”の物語がどんなものかご存知でしょうか?“金太郎”のイメージ・・・唱歌の「まさかりかついだキンタロー♪」というのが真っ先に思い浮かぶと思う。あるいは正月飾り。あるいは絵本。

 金太郎は山で母親と暮らす力持ちの少年で動物たちと相撲などして遊び暮らしている。ある日、大雨が降って川が荒れ渡る事が出来なくなってしまった。金太郎は自慢の怪力を発揮して木を倒して橋をかける。その様子を都の偉い人が見ていて、家来として召し上げられる。金太郎は坂田金時と名乗ることになり、主人・源頼光や他の家臣たちと共に酒呑童子と呼ばれる鬼を退治しに行った。見事な活躍をした金時は褒美を賜り、母親を呼び寄せて都で幸せに暮らした。

・・・先日、立ち読みした子ども向けの絵本では大体こんなような話になっていた。言うまでもないかもしれないけれど、金太郎の出で立ちはてっぺんに丸く剃りのはいった<おかっぱ頭(童髪)>で、裸に<「金」の字がはいった赤い腹賭け>を纏い、<鉞>を担いでいる。しかも少しばかりふっくらした健康優良児風の体型である。現代人の感覚からすると、この外見はお世辞にも素敵とは言いがたい。むしろ滑稽に感じるのではないか。

 こんな面白い奴に何で“雷神”なんてカッコイイ肩書きがあるんだ!?
 どこにも“雷”なんて出てこなかったぞ!?


と思うでしょう。
もう少し突っ込んで調べないと“金太郎”=“雷神”には結びつかない。

 *

 『金太郎』というのは江戸時代に作られたヒーロー的なキャラクターでした。どうやら源頼光が金時という名の家臣を率いて政治的な活躍をしていたという史実があったようで、これが後に「酒呑童子」というお伽話として語られた。この「酒呑童子」から二次創作されて生まれたのが“金太郎”のようです。現在のようなイメージに固まるには江戸から昭和までの長い年月を経ているけれど、大まかな枠組みは江戸時代にほぼ完成していたようです。――先におさらいした“金太郎”とは異なる点がいくつかありますので“江戸期の金太郎”のイメージをあげつらってみましょう。

 ・赤蛇と山姥の子 ・体が赤い ・童髪(子ども) ・鉞を携えている
 ・源頼光に召し上げられて金時となり酒呑童子、土蜘蛛などの討伐に参加した


現代の金太郎に特徴的な<裸に「金」の字がはいった赤い腹賭け>というのは、当時浮世絵師が中国の絵画から子どもの腹賭けファッションを輸入して金太郎に着せてやったことがはじまりらしい、また、「金」の字については草双紙という絵本で人物を示すために衣服の中に印を描きいれるということがよく行われていた(金太郎あるいは金時だから服に「金」という字を入れている、ということ)、その名残りと思われます。金太郎の外見的特徴は<腹賭け>よりも<赤い身体>にあったようです。

さて、以上のような特徴がどうやら金太郎と雷神を結び付けるらしい。参考までに研究者の見解を引用してみます。

 金太郎という造型は象徴に満ちている。赤は疱瘡除けの色にして雷神の色で、鉞は雷神の武器にして修験や林業従事者の道具である。つまり彼は古代からの雷神小童の系譜に連なる子どもであるとともに、疱瘡神をも撃退する逞しい子どもとして描かれているのである。〔B〕

金時の物語が、実に日神にして雷神であり、同時に火神にして鍛冶の神でもある――しかも黄金の御正体とも伝へられる宇佐八幡の信仰に関係するらしいことを、朧げながら推知し得た〔A〕


二つ目のご意見を仰った高橋正秀さんはこういうことも言っています。

輻射状に毛が頭上に並列してゐるので、やがて一転して笠にも傘にもならうといふ――つまり太陽のしんぼるであり、その光線の象形で、顔面にまで降下すれば、天目一箇神をはじめとして、一目の雷神ともなる〔A〕

頭頂部の剃りは「日象をかたどった」ものだという。こういった頭にある一つの丸は太陽を示すと共に目を示すともいう。つまり、これは一つ目を表すシンボルで、一つ目とは天目一箇神など“雷神”の外見的特徴を表すという。


 * 

話は長くなりましたが冒頭でギンタローの頭の円盤について、千笑さまは<剃り>とおっしゃり、私は<目>だと直感したことを言いました。“金太郎”の造型にまで遡ってみたらどうやら<剃り>=<目>=<日>であるらしいことが発覚しました。なんということでしょう!意見が割れたと思いきや実は一致していたようです。

また、“金太郎”と“雷”との繋がりも納得いただけたかと思います。

なお、今回“金太郎”と“雷”を結びつけるのに大分苦労したのですが、江戸期にはさまざまな金太郎の物語がありました。雷神信仰をストーリーに盛り込んだ(金太郎と雷神を関連させた)内容のものも中にはあって、それを参考に話を編集した「金太郎」の絵本などがここニ、三十年の間に出回っていたとも限りません。「金太郎といえば雷」ということを、研究書ではなく絵本などの身近な媒体で知っている人たちというのもいると思います。

なんにせよ、どうやら“金太郎”と“雷”は関連する。これを知っていて曽山先生はギンタローに“電撃攻撃”を設定したように想像できます。・・・偶然ということもなきにしもあらずですが!

『わざぐぅ!』ギンちゃんの造型についてはまだまだ謎の部分が多いのですが、元ネタになった“金太郎”と関連させて色々調べてみると「こういうことじゃないかしら?」という発見があるのではないかと思います。みなさんも是非調べてみて、ついでに私に教えていただけるとすごく楽しいです。


● 追記
この記事でギンタローの頭の円盤について言った。
千笑さまの「<金太郎の“剃り”由来>説」と私の「<目玉>説」という、連想とか推測の域での説をあげた。いずれも金太郎の造型に関する研究者の見方と照らし合わせてみれば、<剃り>=<目>=<日>であるらしいことがわかったので、千笑さまの説も私の説もひっくるめて言う事が出来る。

つまり、我々はギンタローの頭の円盤は、
元ネタであろう金太郎の頭の剃りをモチーフにしたものと推測した。金太郎の頭の剃りとは天目一箇神など一つ目の神の特徴を象徴的に示したものであった。一つ目の神とは日神・火神・雷神・鍛冶の神などの性格を持ち、目は太陽光線のシンボルであるという。即ち、<剃り>=<目>=<日>なのである。

・・・くどくも同じことをくり返してしまったけれど、この見方はあくまで“金太郎”を遡って得た推論であって、『わざぐぅ!』作品自体を検討して得られるものではない。

元ネタ(とおぼしきもの)から造型を探るのも意義あることではある(と信じてなければこんなこと書かない)けれど、作中では未だ何であるかは語られていない。こういう副次的な情報よりは、作中の情報のほうを優先すべきと思うので今後何か語られるようなことがあったら、当然、そちらを中心にものを考えたほうが良いでしょう。

単にデザイン的な意味しかないのであれば(例えばまーさまのトゲとか)、この度の<金太郎由来>という説を考えてみても面白いんじゃないか。

ひとまず、これはあくまで副次的な情報でしかないので、まずは原作を読もう!
ということです。

―― みんな、『わざぐぅ!』2巻は8月末にでるみたいよ!!
(大々的な告知は来月号になると思われ)


* * *

<引用文献>
A 高橋正秀 『高橋正秀著作集 7 金太郎誕生譚』(桜楓社)1971
B 小松和彦「江戸の人気キャラクター ヒーローと妖怪」
 <くもん子ども研究所 『浮世絵に見る江戸の子どもたち』(小学館)2000.11 所収>

<参考文献>
・ 高橋正秀 『高橋正秀著作集 7 金太郎誕生譚』(桜楓社)1971
・ 若尾五雄 『鬼伝説の研究―金工史の視点から』(大和書房)1981.3
・ 柴田弘武 『おばけと物語』(現代書館)1986.7
・ 今野信夫 『だから歴史はおもしろい』(彩流社)1990.4
・ 金太郎・山姥伝説地調査グループ
  『金太郎伝説―謎ときと全国の伝承地ガイド』(夢工房)2000.8
・ くもん子ども研究所 『浮世絵に見る江戸の子どもたち』(小学館)2000.11
・ 鳥居フミ子 『遊学叢書 21 金太郎の誕生』(勉誠出版)2002.1
・ 石井正己 『図説 日本の昔話』(河出書房新社)2003.7
・ 西川照子 『別冊太陽 カタリの世界―昔話と伝奇伝承』(平凡社)2004.6
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