深水ニシンの個人サイト「あらしののはら」管理用ブログです。
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『わざぐぅ!』が昔話(暫定)を典拠にしているので、
折角だから、それに関連してここのネタにしてみようと思う。
今年は「オズ」「昔話」とカテゴリを増やしてみたいと思ったのでした。
今回は、この本を参考に。
● 柴田弘武『おばけと物語』(現代書館)1986.7
新聞の企画で子ども向に書かれたものなのですが、吉野裕『風土記世界と鉄王神話』(三一書房)などの研究をまとめた内容です。『古事記』をはじめ、民間に伝わる妖怪話や御伽話には<鍛冶技術>が暗示されているのではないか?という研究をやさしい文章で解説してくださっている、親切な本だと思います。(残念ながら絶版なので、読む場合は図書館か古書店へGO!)
・・・そういった研究テーマから「桃太郎」についてもお話されているのですが、
この話は岡山県、吉備津神社の伝承を骨組みに肉付けしていったという説が有力らしい。
吉備津彦という神さまが温羅(うら)という鬼を退治した。
温羅が流した血が川に流れ赤く染まった。この川は血吸川と呼ばれる。
温羅は首を切られるが、何年経っても唸り声をあげつづける。
犬飼武に命じて、犬を使役させ首をドクロにしても声は止まない。
吉備津神社の釜殿の下に埋め、夢のお告げを受ける。
それに従い、温羅の娘・阿曽姫を奉仕させ、やっと静まった。
というお話。・・・なんていうか、血みどろです。
「温羅は、古くからここに住む製鉄民で、吉備津彦が彼らを征服したということが、
この話の本当の姿だったのでしょう。すなわち桃太郎とは、吉備津彦だったのです。」
というのが柴田弘武のご意見。
ところで、桃太郎といえば、
桃 / きびだんご / お供(犬・猿・雉) / 鬼
のモチーフが真っ先に思い浮かぶと思います。
以下、吉備津神社の伝承と照らし合わせつつ、「きびだんご」「桃」「鬼」について言及していきたいと思います。
最後に、『わざぐぅ!』にも突っ込んだ話をちょこっとつけます。
以下縮めます。
折角だから、それに関連してここのネタにしてみようと思う。
今年は「オズ」「昔話」とカテゴリを増やしてみたいと思ったのでした。
今回は、この本を参考に。
● 柴田弘武『おばけと物語』(現代書館)1986.7
新聞の企画で子ども向に書かれたものなのですが、吉野裕『風土記世界と鉄王神話』(三一書房)などの研究をまとめた内容です。『古事記』をはじめ、民間に伝わる妖怪話や御伽話には<鍛冶技術>が暗示されているのではないか?という研究をやさしい文章で解説してくださっている、親切な本だと思います。(残念ながら絶版なので、読む場合は図書館か古書店へGO!)
・・・そういった研究テーマから「桃太郎」についてもお話されているのですが、
この話は岡山県、吉備津神社の伝承を骨組みに肉付けしていったという説が有力らしい。
吉備津彦という神さまが温羅(うら)という鬼を退治した。
温羅が流した血が川に流れ赤く染まった。この川は血吸川と呼ばれる。
温羅は首を切られるが、何年経っても唸り声をあげつづける。
犬飼武に命じて、犬を使役させ首をドクロにしても声は止まない。
吉備津神社の釜殿の下に埋め、夢のお告げを受ける。
それに従い、温羅の娘・阿曽姫を奉仕させ、やっと静まった。
というお話。・・・なんていうか、血みどろです。
「温羅は、古くからここに住む製鉄民で、吉備津彦が彼らを征服したということが、
この話の本当の姿だったのでしょう。すなわち桃太郎とは、吉備津彦だったのです。」
というのが柴田弘武のご意見。
ところで、桃太郎といえば、
桃 / きびだんご / お供(犬・猿・雉) / 鬼
のモチーフが真っ先に思い浮かぶと思います。
以下、吉備津神社の伝承と照らし合わせつつ、「きびだんご」「桃」「鬼」について言及していきたいと思います。
最後に、『わざぐぅ!』にも突っ込んだ話をちょこっとつけます。
以下縮めます。
【きびだんご】
“吉備の国(岡山県あたり)”という場所を示すためのものだったか、或いは“吉備津彦”という人物を暗示したものかもしれない。そうなると、“桃”太郎というよりは“きびだんご”が本体だったようにも思えますね ←
【桃】
柴田弘武のご意見では神話からイザナギの黄泉の国訪問の話でイザナギがイザナミから逃げ帰る際女神の使役した追っ手の雷を追い払うのに桃を投げたことを所以に< 桃 = 鬼退治 >つまり鬼退治をする者のシンボルだったのではないか
又、桃はホト(溶鉱炉)を暗示すると考え、桃太郎とは優秀な製鉄技術者を意味するのではないか
という2つの説を提示しておりました。
・・・ここからは私の邪推で、桃といえば常世の食べ物で若返りや長寿を象徴する果物という説がありますが、桃太郎には桃から生まれる話のほか、老夫婦が桃を食べて桃太郎を生むという話型があってこちらは<回春型>なんてふうに言われています。<回春型>は江戸時代から多く見られたとのことで、その頃に桃というモチーフから解釈が広がり“若返り”なんて話が出来たのではないかと思う。<鬼退治 → 桃 → 若返り>というふうに発想が広がったのではないか。
詳細な考証はしていないので私の意見の部分は雑に流しちゃってください;
桃が<川から流れてきた>というのも、検討されるべきポイントなのだけれど
参考書では触れられていなかったことなので飛ばします;
【鬼】
鬼は温羅(うら)のこと。柴田弘武が「製鉄民」としたのは、岩尾五雄『鬼伝説の研究』(1981.3)から鬼の伝承は鉱山に多いため鬼とは製鉄民をさしたものではないかという論を引用した。私は「鬼伝説―」は読んでいないので孫引きということになります;
ただし、<温羅(うら)>という音は<まら>と似ているので、
『古事記』における鍛冶を司る者の名・天津麻羅との関連が考えられる。
本居宣長『古事記伝』に「麻羅は一神の名には非で、鍛冶の通名などにや。」という指摘がされている。高橋正秀は「麻羅・真浦と呼ばれる人には、天目一箇神と同じく鍛工が多く、凡そは宣長の説の様に、鍛冶の通名といふ位の処に落着くらしいが、中には固有名詞化したものも確かにあると見ねばなるまい」と、職業の名前ではなく、人の名を指すものだという説も捨て難いとする。(参考:高崎正秀「鍛冶職根元記」)
・・・この高崎正秀のご論は古いもの〔参照したのは『高崎正秀著作集第七巻 金太郎誕生譚』(1971.9)から〕なので、現在の研究とは合わないかもしれない。温羅と鍛冶師との関連について詳しい検討を、たぶん岩尾五雄「鬼伝説―」にまとめられていると信じてまたの機会に読んでみたいと思う。
なお、柴田弘武は「真金吹く 吉備の中山」という歌に歌われる中山の有木別所が戦国時代に製鉄が行われていたことなどを上げ、吉備神社周辺の山がタタラ場のある鉱山であったことにも言及されていました。伝承に登場する<血吸川>が赤いという現象についても“水が鉄分を含んで赤い”という科学的な見地での言及をしたうえで、鉱山地帯であることを言われている。
* * *
さて、「わざぐぅ!」のお話。
先入観のたぐいになると思うので、あまり語るべきことではないとも思う。
でも、何かそういった“典拠を求めていく娯楽を含めて書いたもの”でもあると期待して雑談程度に書きます。
まタちゃんといえば“裏血(うらぢ)まタロー”。
「うらしまたろう」からとっているようではあるけれど、一方で「桃太郎」の原型になったらしい吉備津神社の伝承から「温羅(うら)」と「“血”吸川」のことを音で連想させようとしているんじゃないか、と思ったわけです。
単純に“裏血”という字面が恐ろしげなことで、見た目の可愛さ貧弱さとのギャップを狙ったもののようにも思うのだけれど、『わざぐぅ!』が“昔話(暫定)”に関してマニアックな情報を盛り込んでいるように感じられるので、
ないこともない!と思う。
「うらしまたろう」というのも、『わざぼー』にあった“箱”のテーマを引き継いでいるようにも思う。
・・・なんにせよ、物語を下敷きにしてキャラクター造型しているというところが魅力的で、ギンちゃんの雷能力といい、趣向が細かくて私的には楽しくってならないんです。イッスンを恋愛話に絡めているところもこだわりがあるように思える。――むかしばなしの類で恋愛を描いている話というと、「うらしまたろう」(異界の姫との婚姻)「一寸法師(≒小男の草子)」(主人公の片想いから婚姻へ)「竹取物語」(求婚者との戦いw)ぐらいしか思い浮かばない
とりあえず、話は続いているので今後どんなキャラクターが描かれるか楽しみです。
“吉備の国(岡山県あたり)”という場所を示すためのものだったか、或いは“吉備津彦”という人物を暗示したものかもしれない。そうなると、“桃”太郎というよりは“きびだんご”が本体だったようにも思えますね ←
【桃】
柴田弘武のご意見では神話からイザナギの黄泉の国訪問の話でイザナギがイザナミから逃げ帰る際女神の使役した追っ手の雷を追い払うのに桃を投げたことを所以に< 桃 = 鬼退治 >つまり鬼退治をする者のシンボルだったのではないか
又、桃はホト(溶鉱炉)を暗示すると考え、桃太郎とは優秀な製鉄技術者を意味するのではないか
という2つの説を提示しておりました。
・・・ここからは私の邪推で、桃といえば常世の食べ物で若返りや長寿を象徴する果物という説がありますが、桃太郎には桃から生まれる話のほか、老夫婦が桃を食べて桃太郎を生むという話型があってこちらは<回春型>なんてふうに言われています。<回春型>は江戸時代から多く見られたとのことで、その頃に桃というモチーフから解釈が広がり“若返り”なんて話が出来たのではないかと思う。<鬼退治 → 桃 → 若返り>というふうに発想が広がったのではないか。
詳細な考証はしていないので私の意見の部分は雑に流しちゃってください;
桃が<川から流れてきた>というのも、検討されるべきポイントなのだけれど
参考書では触れられていなかったことなので飛ばします;
【鬼】
鬼は温羅(うら)のこと。柴田弘武が「製鉄民」としたのは、岩尾五雄『鬼伝説の研究』(1981.3)から鬼の伝承は鉱山に多いため鬼とは製鉄民をさしたものではないかという論を引用した。私は「鬼伝説―」は読んでいないので孫引きということになります;
ただし、<温羅(うら)>という音は<まら>と似ているので、
『古事記』における鍛冶を司る者の名・天津麻羅との関連が考えられる。
本居宣長『古事記伝』に「麻羅は一神の名には非で、鍛冶の通名などにや。」という指摘がされている。高橋正秀は「麻羅・真浦と呼ばれる人には、天目一箇神と同じく鍛工が多く、凡そは宣長の説の様に、鍛冶の通名といふ位の処に落着くらしいが、中には固有名詞化したものも確かにあると見ねばなるまい」と、職業の名前ではなく、人の名を指すものだという説も捨て難いとする。(参考:高崎正秀「鍛冶職根元記」)
・・・この高崎正秀のご論は古いもの〔参照したのは『高崎正秀著作集第七巻 金太郎誕生譚』(1971.9)から〕なので、現在の研究とは合わないかもしれない。温羅と鍛冶師との関連について詳しい検討を、たぶん岩尾五雄「鬼伝説―」にまとめられていると信じてまたの機会に読んでみたいと思う。
なお、柴田弘武は「真金吹く 吉備の中山」という歌に歌われる中山の有木別所が戦国時代に製鉄が行われていたことなどを上げ、吉備神社周辺の山がタタラ場のある鉱山であったことにも言及されていました。伝承に登場する<血吸川>が赤いという現象についても“水が鉄分を含んで赤い”という科学的な見地での言及をしたうえで、鉱山地帯であることを言われている。
* * *
さて、「わざぐぅ!」のお話。
先入観のたぐいになると思うので、あまり語るべきことではないとも思う。
でも、何かそういった“典拠を求めていく娯楽を含めて書いたもの”でもあると期待して雑談程度に書きます。
まタちゃんといえば“裏血(うらぢ)まタロー”。
「うらしまたろう」からとっているようではあるけれど、一方で「桃太郎」の原型になったらしい吉備津神社の伝承から「温羅(うら)」と「“血”吸川」のことを音で連想させようとしているんじゃないか、と思ったわけです。
単純に“裏血”という字面が恐ろしげなことで、見た目の可愛さ貧弱さとのギャップを狙ったもののようにも思うのだけれど、『わざぐぅ!』が“昔話(暫定)”に関してマニアックな情報を盛り込んでいるように感じられるので、
ないこともない!と思う。
「うらしまたろう」というのも、『わざぼー』にあった“箱”のテーマを引き継いでいるようにも思う。
・・・なんにせよ、物語を下敷きにしてキャラクター造型しているというところが魅力的で、ギンちゃんの雷能力といい、趣向が細かくて私的には楽しくってならないんです。イッスンを恋愛話に絡めているところもこだわりがあるように思える。――むかしばなしの類で恋愛を描いている話というと、「うらしまたろう」(異界の姫との婚姻)「一寸法師(≒小男の草子)」(主人公の片想いから婚姻へ)「竹取物語」(求婚者との戦いw)ぐらいしか思い浮かばない
とりあえず、話は続いているので今後どんなキャラクターが描かれるか楽しみです。
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